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株式会社北條製餡所

あんが持っている素材本来の美味しさと魅力を活かし"安心・安全で美味しいあん"に、こだわりを持って皆様にお届けしていきます。

魁る 1950年に京都伏見で産声を上げてから半世紀。私たちは常に、「魁る」の精神で無限に広がるあんの可能性を追求し続けてきました。北條製餡所の歴史はすなわち「魁る」精神の物語なのです。

第二章 “いいはず”の仕事。本当の製餡所。

1960年当時、東京オリンピックを4年後に控えて成長を続ける経済は、雇用を増大し、全ての企業が人手不足をきたす。世間に知られぬ製餡業にあってはなおさらである。自分の会社が人手不足であれば得意先の菓子・パン業界も同じであろう。こういう時に受け入れられる餡の販売方法はないかと考える。

生餡に砂糖、水飴を加えて煮き上げれば、得意先ではそのまま菓子・パンに包むことができて"あん煮き"の人手と時間が節約できる。また、餡に添加する砂糖仕入代金が不要になって資金効率を高められる。当社としては、餡の保存性が向上するので、毎日毎日早朝配達をしなくてよい。広域販売が可能になる。正にいいことづくめである。"サァやろう"の意気込みで設備を整え始める。石炭置場の仕切板を高くして、3坪程の場所を作る。レンガを丸く積んで炉を作る。煙突は径15cmの土管をコンクリートでつなぐ。鍋は4斗(72L)入鉄製の三州ヤマサ号、混ぜ棒は木製のボートのオール状のもの。以上でできあがり。

いいことづくめの新しい仕事。うまくいかないはずがない。"あん"が固すぎる。やわらかい、火が通っていない、石が入っていた等々、クレームをつけるのは誰だ。加糖餡が納入されたため職場を失った"あん煮き"の職人達である。我々は製餡所と称していても生餡を作るだけ。納入先の"あん煮き"さんが本当の製餡所であったのだ。

アンパンの餡も得意先ごとに違う。和菓子にいたっては千差万別、品種の多いのに加えて同じ和菓子でも店ごとに餡が違う。三拝九拝、拝み倒して教えを乞うほかはない。

沸騰して飛び跳ねる餡は肌にくっついて水ぶくれを作る。石炭を入れて火勢を強める。力をこめて混ぜ棒で鍋の底を早くこする。ふき出す汗をしたたらせながら、"いいはず"の仕事こそ事前の調査を慎重にすべきと悟るとともに、後には引かぬ、必ず一流の仕事にして見せると心を固める。

今、菓子・パン用の餡は300種類余り。大手納入先と仕入先、得意先の枠を超えた提携が続いている。

あんが固すぎる。やわらかい、火が通っていない、石が入っていたなどなど。クレームをつけるのは誰だ。